コンピュータはアドレス方式と呼ばれる方法で記憶します。つまり、記憶する場所があらかじめ用意されているのです。しかも、その場所は数多くの部屋からなり、順に部屋番号(アドレス)が決められています。記憶する事象はその小部屋に個別に格納され、再び記憶を呼び出すときは、部屋番号を指定し、その内容を取り出すという非常に能率的な方法を取っています。
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一方、脳では、記憶は神経回路にたくわえられるのですが、実は、同じ神経細胞がほかの記憶にも使われます。なぜなら、一つの神経回路に一つの記憶しか貯蔵できなかったとしたら、記憶の容量はかなり限られてしまうからです。これでは、回路と同じ数の情報しか覚えられなくなってしまいます。ですから、記憶容量を確保するためにも、脳は色々とやり繰りしながら、神経細胞を使い回さなければなりません。
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しかし、逆に、この性質が、脳に「人間性」を与えていることに、ぜひ気づいてほしいと思います。保存情報が相互作用するということは、全く異なるものごとを関連付けることができるということです。これはすなわち私たちが行っている「連想」という行為そのものです。さらに、情報を関連付けまったくちがった新しいものが形作られるかもしれません。これこそが「創造」という行為です。私たちが想像したり、思索したり、創造したりという行為は、記憶が相互作用できる神経回路にたくわえられているということの恩恵なのです。そして、もちろん、こうした行為は正確無比を誇るコンピューターには到底できない芸当です。
(池谷裕二『記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶の仕組みと鍛え方』より)
皆様お疲れ様です。
都知事選はまもなく投票締め切り、そして開票ですね。
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