土木学会誌5月号より、IoTの話題(3)-事例研究:エネルギーマネジメントの取組みについて

皆様こんにちは。ピースです。
今日は、いつもと一味違う前置きでいってみます。

実は、前回の記事を書いたのと同じ日、読書ログに、将棋棋士で現在防衛をかけて名人戦を指していらっしゃる、佐藤天彦さんの本のレビューを書きました。
人工知能と言いますと、このブログでは以前羽生さんの本のレビューちらっと取り上げましたが、佐藤さんもこの名人戦の直前に、(もちろん「名人」という肩書で)コンピューターソフトとの対戦に挑んでいらっしゃいました。
私はレビューには書きませんでしたが、この『理想を現実にする力』という本にも、最後の方にまさにコンピューターソフトの話題があります。

結果は佐藤名人の2戦2敗だったのですが、羽生三冠の著書も含めて、(前回話題に上がっていた囲碁もなのですが)「単純に強さだけではコンピューターに勝てない」という状況に入ってきた中で、人間同士の勝負からどうやって付加価値を生み出すか、ということが注目されそうですね。

…と、申し上げたところでなのですが、念のため。


このシリーズの話の中心は(当然、両者には深い関連性はありますし、今回も実際のところはそれに近い事例なのですが)「人工知能」ではなくて、タイトルの通り「IoT」です。
というわけで、今回ともう1回くらいで、同じ土木学会誌5月号から、IoTに関する事例研究を取り上げてみたいと思います。

今回の引用元は、(株)日建設計の田丸康貴氏による、「柏の葉スマートシティにおけるエネルギーマネジメントの取組みについて-きめ細やかなデータ管理による電力融通-」です。

最先端のスマートシティを目指して

 柏の葉スマートシティは、千葉県柏市の北西部に位置し、つくばエクスプレスの柏の葉キャンパス駅を中心に、(…中略…)駅前周辺エリアを先導開発エリアとして位置付けて、「省エネ・省CO2×安全・安心×サスティナブル」をテーマにスマートシティの開発を進めている。

柏の葉スマートシティの特徴

 先導開発エリアでは、自営線の電力・情報ネットワークインフラを整備し(図1)、AEMS(エリアエネルギーマネジメントシステム)と各施設の中央監視設備やHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)、スマートメーターがリアルタイムで連携し電力、熱、ガス等のエネルギーデータを一元的に収集管理している。これにより、日本初となる平常時の街区間電力融通や非常時の電力融通拡大等の効率的なエネルギーマネジメントを実現している。

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日本初となる平常時の街区間電力融通

 先導開発エリアは、多様な用途の複数建物から構成され、複数のエネルギーの需給パターンからなる地域である。この電力ピークが異なる特性を生かして、街区間で電力を融通しあうことで、電力ピークカット・ピークシフトを実現している(図2)。
 具体的には、ゲートスクエアとららぽーと間で太陽光発電や蓄電池などの分散電源を街区間で相互に電力融通を行っている。

170601_fig2

非常時の電力供給拡大

 東日本大震災では、計画停電による都市機能停止等の集中型エネルギーシステムの脆弱性が顕在化し、BCP(ビジネス継続計画)への注目が高まり、分散型エネルギーシステムが普及するきっかけとなった。
 非常時(災害等による停電時等)の電力供給拡大として、非常用発電機や蓄電池等の分散電源から、集合住宅共用部の照明、コンセント、エレベータ等に72時間以上の電力供給を図る計画としている。


いかがでしょうか?

資源・エネルギーに関する問題というと、恐らくですが、このブログをお読みの皆様は、「原発再稼働を早急にやるべき」、そして「再生可能エネルギーは利権まみれの代物だ」という考えをお持ちの方の割合も高いかと思います。
また、それらとは少し方向性が違いますが、私自身もメインエントリで、「CO2温暖化説の是非」に関しては軽く言及しています。
そしてもちろん、これらの問題に関しては、大マスコミがあまり取り上げない論点も含めて、きちんとした検証は不可欠だと考えていますし、このブログにおいても今後詳細に取り上げる機会はあるかもしれません。

ただ、いずれにしても、この資源・エネルギーの問題は、限りあるものを「どう確保するか」ということと、「どう利用するか」ということに分けて、両方の視点から考えることが必要ですよね。
先ほど述べたことは前者、今回の引用元で中心においているのは後者というわけです。

そして、「どう利用するか」を考えるときに、この引用元では、2つの要素に分けて述べられています。
1つが、平常時の町区間電力融通 、特に「電力ピーク」への対応です。
この「電力ピーク」への対応については、「一日」という単位で見ても、昼は夜に比べて消費電力は大きいですが、ある一定量については「常に供給し続ける」必要があるわけですから、そういう対応を含めて、ということだと考えられるでしょう。

もう1つが、非常時の電力供給拡大です。
これまで、本ブログでは繰り返し述べて来たとおり、日本は常に自然災害の脅威にさらされている国です。
だからこそ、生産力の向上を考える上でも、BCPは絶対に避けて通れない課題ですし、もちろん私の勤務先でも色々な具体策を練っています。

さて、”IoT(Internet of Things)”、つまり「モノのインターネット」というとですね、例えば、一番身近に感じるものでは、「アプリによって、スマホを赤外線よりもはるかに長距離に対応したリモコンのように使って家電を遠隔操作する」とかいう技術ですよね。
これも、今でこそ当たり前にテレビなどでの宣伝もされるようになったのですが、私も初めて知ったときは衝撃を受けた覚えがありますし、皆様方もきっとそうだと思います。
でも、これはそのさらに土台となる「電力」の管理を、しかも街の丸々一つ分という規模において、情報通信技術によって行うということで、さらに凄まじいインパクトがありますね。
まあ、今の都市も、「部分的には」こういったライフラインの管理自動化の技術は実用化されているとも言えるでしょうが、こういう技術を紹介されないと、なかなか気づかない部分でもあるでしょう。

私の所感としては、平常時もそうですが、特に非常時ということになると、完全に「人の手から離す」というのは、確かに難しい印象もあります。
でも、学術面・実用面どちらの方向からでも、こういう挑戦をされる機関は応援したくなりますね。

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