東日本大震災から5年…(2)

前記事の続きです。


藤井 防災は経済学上、市場に織り込むことができない分野です。市場は利益を出すために短期的かつ視点も矮小化する特徴がありますが、防災は広い視点から長期的に対策を講じる必要がある分野だからです。


ここでは「広い視点から長期的に」という言葉を強調してみました。

何か事を起こすために大局を見る能力については、私も決して自信は無いです(というか、私が土木とか環境系の専攻に来て、指導教員の先生からも私の一番の弱点はそこだというご指摘を頂いていたくらいですから)。

ただ、「短期および狭い範囲で最良の条件となるものを足し合わせていけば、それがより長期間、あるいは広範囲での最良な条件となるかというと、絶対にそうはならない」ということは、私も国土計画を勉強した中で学んできました。
それに、皆様方ももう、そのことはお分かりだと思うので、ここではまた別の切り口から考えてみたいと思います。

どういう切り口かと言いますと、

「利益を出す」だけではなく、「損失を減らす」ことも同等に重要である。
そして、この「損失を減らす」ということが、まさに防災の意義であり、
なおかつ、それを市場に織り込むことを難しくしている要因でもある。

ということです。

民主党政権のとき、事業仕分けでスーパー堤防のことが話題になりましたよね。
引用元を示せなくて申し訳ないのですが、そのとき、どこかのブログのコメント欄で、こんな例えをされた方がいらっしゃったんですよ。

「民主党の政策に関する主張は、『車を作るときにブレーキは無駄なものでしかないから、ブレーキのない車を作ろう』と言っているようなものだ」
と。

いやぁ、本当にこれは言い得て妙だと思います。
「損失を減らす」ことこそ市場に織り込むのが難しいから政府がやるべきなのに、その役割を完全に放棄した、というわけですからね。


大石 この二十年間、先進国で唯一、公共事業費を削減してきた煽りを受けて、河川改修の予算も大きく減少した。予算が伸びていれば、この堤防強化事業もずっと前に整備が完了していたはずです。救える命があった。メディアも上空から「堤防が決壊した」という映像を流すだけで、問題の根本を国民に知らせようとしません。強い憤りを覚えます。


これは東日本大震災の時もそうでしたね。
地震の発生から数日たつと、
「トラウマをえぐるように津波の発生現場の映像を流すぐらいなら、もう少し今後の人的被害を減らす方策とか、避難している方々に役立つ情報を発信することは出来んのか」
という声が多く上がっていたのを覚えています。

インフラとか公共事業関係の問題だけではなくて、今の日本の問題全部に言えることですが、
「一見わかりやすいところ(もちろん、ここでは自然災害の映像のことだけではなく、感情的にとっつきやすい似非平和主義だとかいうものも含みます)」だけ取り上げて、今ある危機の本質を分からせるための報道がほとんどなされていないことが浮き彫りになっているわけです。
こういった「大マスコミの質の低下」については、このブログをお読みの皆様方なら十分把握していらっしゃると思いますので、いまさら長くは書かないことにします。


大石 東日本大震災後、大きな混乱や犯罪が起こらず、粛々と運命を受け入れ、前向きに生きる被害者の姿に世界中の人が驚嘆しました。その国民性の秘密は、実は「国土」にありました。日本は国土の至るところで大地震が起こる可能性があり、台風、豪雨、豪雪といった自然災害と常に向き合う国です。
 それが日本人の国民性を養ってきて、そうした共同作業が仲間意識や郷土意識を創り上げてきた歴史があります。日本人としてのアイデンティティーを大切にしながら世界に羽ばたくためには、経済の成長と競争力の向上が不可欠で、そのためには今こそ事実に基づいた骨太のインフラ整備が日本には必要なのです。


「仲間意識や郷土意識」「日本人としてのアイデンティティー」という言葉で、去年の天長節一般参賀の時に書いたブログ記事を思い出しました。
う~ん、こういう締めが来ると、なんだか感動を覚えますね。

今年は皇紀2676年です。
ご存じない方が聞けば、「西暦に660を足すと皇紀になる」というだけでも、「ええっ!?」って思われることでしょう。

この締めを読んで思わされたことは、
確かに、これだけの間、日本という国の形が受け継がれてきたことだけでもすごいんですよ。
でも、
国土の条件だけでいえば、それは決して有利ではない、というかむしろ不利な条件下にある中でのことだったと考えれば、もはや本当に奇跡というレベルなんでしょうね。

というわけで、この記事も、なかなか読みごたえがありました。
で、以下は余談です。

月刊ウィルからの引用は2号続けてとなりましたが、
過去号は本屋では買えなくとも、いまは電子書籍版というのもあるようです。
大変便利な世の中になったものですね。
Kindle
honto
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過去号で、「買い逃したけど、どうしても読みたい記事がある」という方は購入を検討されてみると良いと思います。

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