「水防災意識社会再構築ビジョン」に関する個人的解釈(2)-ハード対策

皆様こんにちは。ピースです。
今年も残すところ、あと4日と数時間になりました。
お仕事、そして新年の準備で皆様忙しいかと思いますが、体調に気を付けて年越しを迎えましょうね。

さて、本題は「水防災意識社会再構築ビジョン」の話題の続きです。
「続き」と言っても、間に一般参賀の報告を挟んだわけですが…

すいません。
改めてこのブログを見直してみると、私は長編記事をきちんと首尾一貫してまとめ切ったケースが本当にほとんどありませんでしたね。
これも、このブログのスタイルということでw


前回は、去年今年の水害のお話をした後に、国交省の打ち出したこの政策の特徴として、ハード・ソフト両面による相補的な効果を狙ったものということを軽く述べました。
というわけで、今回はまずハード対策面について、詳細に述べていきたいと思います。
内容は、こちらのページから。

ハード対策のポイント

従来の洪水氾濫を未然に防ぐ対策に加えて、
氾濫が発生した場合にも被害を軽減する危機管理型のハード対策を推進します。

洪水氾濫を未然に防ぐ対策

(ポイント)
堤防から水があふれないようにしたり、
堤防に水が染み込んで壊れやすくならないよう
優先的に整備する必要のある区間から対策を進めます

危機管理型ハード対策

(ポイント)
もし、堤防から水があふれてしまった場合でも、堤防が壊れてしまうまでの時間を少しでも引き延ばす工夫をします

私自身は、(堤防のみならずダム・堰などを含めての)施設の構造設計に関してはほぼ素人なのですが、少しばかり思うことを。

ハード面における新しいところは、最初に述べられている通り、後者の「危機管理型」ハード対策です。
このポイントにある、「堤防から水があふれてしまった場合でも、堤防が壊れてしまうまでの時間を少しでも引き延ばす工夫」という考え方、今までにも提言された方はいらっしゃったかもしれませんが、水防災の分野で実践されてきた例はほとんど見られなかったようです。
(ちなみに、現在では河川のみならず海岸分野も津波への対策でこういう考え方が重要視され、よく「粘り強い堤防」という言い方をされるようです。)

昨年の鬼怒川災害を受けて、国交省の政策においても、それに対応することが必要になったわけです。
前者の「洪水氾濫を未然に防ぐ対策」という考え方は、もちろん前々からあったわけですが、それに加えて、今回新たに「危機管理型」という考え方を採用した理由は、大きく2つ挙げられると考えます。

1.「カネ・ヒト・モノ」の制約による限界

ここで申し上げるのは、ブログのメインエントリで書いていることを水防災分野に合わせて言い換えたものですが、まあ、当たり前のことですね。

自民党が政権奪還した2012年の総選挙の時に、「国土強靭化」を政策の目玉として挙げました。
そして、今はそれが徐々に形になってきているわけですが、その一方でコスト面の問題は一昔前よりも厳しくなっていることには間違いないです。
(もちろん、「内需拡大によるデフレ脱却のためにも、さらなる公共投資が必要」ということを主張される方は複数いらっしゃいますし、私もそれには大まかには賛成するわけですが。)

さらにもう一つ、今は一昔前に比べても「環境に対する配慮」が必要になりました。
実際、時代の変化に合わせて、河川法も「治水」に加えて「利水」、そして平成9(1997)年の改正で3つ目の要素として「環境」が加わりました

で、「環境に配慮」というと、当然ながら「新しく造るもの」を計画・設計する中でそれを考えていくというのも一つのアプローチではあります。
しかし、もう一つ、「今あるものをできる限り有効活用する」ということも重要です。

これらの制約に対応する具体的な方法が、まさにここに書かれた「天端の保護」とか「裏法尻の補強」ということになるのでしょう(引用した画像も、本エントリの最後に貼っています)。
堤防のかさ上げ等に比べると、かなり小手先な方法という印象も受けるかもしれませんが、それでも「決壊までの時間を延ばすことには意味がある」というわけです。

では、「なぜ『時間を延ばす』ことに意味があるのか?」と言われれば、

2.「ソフト対策」の効果を高めること

その答えはまさに、前回から述べている、これです。

皆さん、「緊急地震速報」はもうご存知ですよね。
地震速報が鳴ってから実際に揺れるまでの時間は、長くてもせいぜい10秒とかそんなものとも言われますが、
数秒でもあれば、火元の処理と避難経路の確保等、できることは結構あるわけです。

まして、浸水に対して数十分とか1時間とかいうレベルの時間稼ぎができれば、大抵どんな状況でも最低限自分の命を守るための行動をとることは可能だと言って問題ないわけですよ。
それに加えて、こちらでシンポジウムの報告を書いたときにも述べたとおり、現在はレーダ雨量計のデータ配信も一般の方々が見やすい形で行われているわけですから、「事前に危険を察知する」ことも可能になったわけです。

ただし、当然ながら「それだけの時間があれば、最低限自分の命を守るための行動をとることは可能だ」ということと、「実際に人命を守るための正しい行動を取れるかどうか」は、完全に別問題です。
というわけで、そのための「ソフト対策」については、次回。

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「危機管理型ハード対策」の説明に利用されている画像です。
危機管理型ハード対策

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