皆様こんにちは。
前回の冒頭で申し上げたとおり、今日はこの話題。
ノーベル医学賞 大隅氏細胞の自食作用解明オートファジー がん発症と関連スウェーデンのカロリンスカ研究所は3日、2016年のノーベル医学・生理学賞を、飢餓状態に陥った細胞が自らのタンパク質を食べて栄養源にする自食作用「オートファジー」の仕組みを解明した東京工業大の大隅良典栄誉教授(71)に授与すると発表した。生命活動に欠かせない基本的な現象を明らかにし、医学や生物学の進歩に大きく貢献した功績が評価された。(10/4産経新聞1面より)
本当に、素晴らしい功績ですね。
医学生理学賞に関しては、今年の大隅良典先生、昨年の大村智先生、2012年の山中伸弥先生(私のブログでは、過去に研究を取り巻く環境や研究職の姿勢の部分を中心にして、 山中先生のお話を取り上げたことがありました)と、受賞が続いている感じがします。
でも、その前は1987年の利根川進先生ということで、日本人が台頭してきたのは割と最近です。
さて、生理学とか生物学というと、私自身が凄く馴染みのある分野というわけではありません。
けれども、私の出身高校が、医学部の進学率がそこそこ高いところでした。
そのほかにもいくつかの理由ありで、私も最新の話題には少なからず興味があります。
それで、この分野に関してこれまで私が抱いていた印象は、「基礎」(理学的アプローチ)と「実用」(工学・農学・医学的アプローチ)の間の差が小さいことなのかなあということでした。
例えば、物理学賞でいうと、
- 昨年受賞された梶田隆章先生の「ニュートリノ振動」は前者寄り
- 一昨年受賞された赤崎勇・天野浩・中村修二3先生の「青色発光ダイオード」は後者寄り
な分野の典型と言え、結構明確な違いが見えます。
一方、医学生理学賞は、上記2012年以降に受賞された3先生の内容が、それぞれ
- オートファジー
- 線虫による感染症の治療
- iPS細胞
と、いずれも「基礎研究っぽい感じもありながら、数年程度の期間で実用に結びついてナンボのもの」という感覚になりますよね。
ですが、そんな印象で聞くとちょっとびっくりしたお話が、こちら。
「役立つ」研究求める日本の風潮を危惧 ノーベル賞・大隅教授の寄稿に注目集まる
ノーベル医学・生理学賞の授与が決まった東京工業大の大隅良典栄誉教授が昨年、文部科学省の競争的資金「科研費」(科学研究費助成事業)の公式サイトに寄稿した文章が注目を集めている。寄稿で大隅教授は、「すぐに役に立つ研究」ばかり求められる昨今の日本の風潮を危惧し、「『人類の知的財産が増すことは、人類の未来の可能性を増す』と言う認識が広がることが大切」と訴えている。(中略)国全体で研究の「出口」を求める傾向が強くなっていることへの懸念も示し、「研究者は自分の研究が、いつも役に立つことを強く意識しなければいけない訳でもない」と指摘。「『人類の知的財産が増すことは、人類の未来の可能性を増す』と言う認識が広がることが大切」としている。さらに、「若者がほとんど就職試験での模範回答のごとく、考えもなく“役に立つ研究をしたい”という言葉を口にする。直ぐに企業化できることが役に立つと同義語の様に扱われる風潮があるが、何が将来本当に人類の役に立つかは長い歴史によって初めて検証されるものだという認識が、研究者の側にも求められていると思う」と、「役に立つ」研究を求める風潮に危機感を示している。
私は「技術開発・実用研究という分野に携わっている者である」一方で、自分自身のことを、「割と物事のルーツを掘り下げるとかいうことも好きという、学者気質の一面もある」タイプの人間と思っています。
なので、うまく言葉で表現できないながらも、これはすごく考えさせられました。
本ブログには、今年の113番元素発見の時、
今は近海のメタンハイドレートとかレアメタルが話題になって、日本も「資源大国」になるポテンシャルは十分あるということも言われていますね。でも、そういうこととは全く関係なく、これからも「我が国は人材が資源」という言い方はずっとされ続けるでしょう。
と書きました。
3年連続の日本人ノーベル賞受賞ということで、本当に、この思いは間違いなく強くなりましたね。
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