九州豪雨の被害に思うこと(3)-極端化する気象・気候への対応は「待ったなし」の状態

皆様こんにちは。ピースです。
またまた、神奈川県で凄まじい洪水が発生したようですね。
私自身も、人命はもちろんのこと、財物も可能な限り護られることを最優先とするべく、技術的課題に日々真剣に取り組み、またアクセス数も大したことないブログでですが、行政に対しても声を上げ続けて参ります。

というわけで、九州北部豪雨の話の続きですが、もう1ヶ月経ってしまいましたので、今回は広く浅く取り上げる感じにして、とりあえずシリーズを締めたいと思います。
個別により深く掘り下げるのは、また土木学会誌等で話題になったら、ということで。

引用は、7/7産経1面、および7/6産経2面より。

2つの風衝突 線状降水帯に

福岡、大分両県で5日に記録的大雨を降らせた「線状降水帯」は、福岡、佐賀県境に位置する「脊振山地」の東端で、2方向の風がぶつかったことで形成されたとみられる。こうした風による現象はこれまででも線状降水帯の発生要因となってきた。
同庁
(ブログ筆者注:もちろん、気象庁です)によると5日午後、九州北部では太平洋高気圧の縁を回って吹く風で暖かく湿った空気が南西方向から流れ込んだ。同時に梅雨前線が未明から正午にかけて九州北部まで南下、前線の北側で大陸からの乾いた風が北西方向から吹いた。
2つの風は、脊振山地を避ける形で風下にあたる山地東端でぶつかり、温かい南西風は相対的に冷たい北西風の上に乗り上げて上昇気流となり、積乱雲が発生。積乱雲は、風に流されて大分県方面へ動く一方、湿った南西風は分散せず同じ場所で上昇し続け、積乱雲が列のように並ぶ線状降水帯が形成されたという。
大きな被害のあった福岡県朝倉市周辺は、風がぶつかる場所となり、同時に積乱雲の発生ポイントとなった背振山地のすぐ東側にあたる。通常1時間程度で衰退する積乱雲が次々と連なったことで、長時間にわたり100ミリ超の猛烈な雨が何度も降ったとみられる。
こうした風による現象は全国でも、たびたび線状降水帯の要因になっているという。
同町の松本積主任予報官は「関東地方でも風のぶつかる場所から線状降水帯が発生した事例がある。ただ、何がきっかけで発生するか事前に予測するのは難しい」と話した。

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命守る行動につなげよう 特別警報

特別警報は「数十年に一度程度」の重大な災害が差し迫った状況にあると判断されるとき発表される。住民に「命を守る行動」を強く促すことを主眼として平成25年夏に新設された、最も切迫度の高い警報である。
その意味を正しく理解し、命を守る地域防災力の向上につなげることが重要である。

近年は台風や集中豪雨が強大化する傾向にあり、「数十年に一度程度」の極端な現象が、日本列島全体では珍しくなくなってきている。自然災害でも人災でも、多くの場合は慣れが油断に変化して、人命が失われる。
東日本大震災では大津波警報が発令されたが、必ずしも住民の避難行動にはつながらなかった。1万8千人を超える命が津波に奪われた反省から、特別警報は創設された。防災情報は行動に結びつけてこそ意味があるのだということを、国民一人一人が心に刻まなければならない。

「気象」に関しては、昨年の岩手県を襲った台風10号について書いた記事でも取り上げました。
私は今回、「線状降水帯」というキーワードを新たに初めて知りましたね。
確かに、私が小~中学生くらいの頃は、「夕立」と言われる入道雲による雷雨って、大体1時間とかそんなものでやむっていうイメージがありましたが、最近は1時間で30mmくらいなら数時間続けて降るというのも、珍しくなくなったような感覚がありますね。

今はコンピュータでのシミュレーションによる予報の精度も確実に上がっていることには違いありません(ちなみに、気象ではありませんがその「精度を上げる技術」を河川の増水の予測などに適用する技術は、私の勤務先でも一部取り扱っています)が、それでもプロの方から見ても、「何がきっかけで発生するか事前に予測するのは難しい」ということですから、やはりそれだけ不確定要素が多い分野だということもよく分かります。

で、もう一つ注目したいのは、主任予報官の松本氏のコメントのその前の一文。

「関東地方でも風のぶつかる場所から線状降水帯が発生した事例がある」

ですね。

これまで私は、こちらをはじめとして数々のエントリで、

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

という名言を引用してきました。

ただし、災害ってのは、基本的に一般の住民が活かせるのは「経験に学んだこと」が限界だと考えた方がいいでしょう。
では、「歴史に学んだこと」を活かさなければいけないのは誰か?と言うと、もちろん、まずは行政であり、次にその方針を理解して動く災害・防災の関係者(これはもちろん、私達技術者もですし、この前のエントリでお話しました、災害の現場を相手に活動される方々もです)ということになります。

ですが、生憎ながら後者の記事にもある通り、それが命を守る行動につながっているとはまだまだ言いにくい状況なのは間違いないことです。
そして、シリーズの最初のエントリにも申し上げました通り、その人命を守るための公的機関の予算割り当ては(リンク先は民主党政権のことをお話しましたが、その前も含めて)どんどん削られる方針で来ていたわけです。
もちろん、それには憤りを感じるところもありますが、当たり前ですがこれを理由にして仕事の手を抜くわけにはいきませんから…。

そして、私自身も、「特別警報」という言葉、確かに最近になって聞くようになった言葉だなあと思っていましたが、運用が開始されたのは産経の記事にある通り、平成25(2013)年8月30日からということだそうです。
限られた予算や人工という条件の下で、国民あるいは地域住民の行動に対する意識付けを行うことにより、少なくとも人命を守るという考えに立って、ハードソフトの両面から国土計画の方針も立てられているわけですから、やはり「防災情報は行動に結びつけてこそ意味があるのだということを、一人一人が心に刻まなければならない」ことには疑いの余地がないですね。

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